Thursday, December 6, 2007

「三蔵経」の王室後援者






「三蔵経」の王室後援者



M.R. ベンチャーパー・クライラーク



今日、カラヤニ・ヴァダナー王女の御誕生日を祝福する仏教儀式が政府官邸で行われました。王女の最近の大事な御活動の中に、ローマ字版“TIPIṬAKA”(三蔵経)の御後援があります。


今年84回目の御誕生日をお迎えになられたタイ国王の王姉、カラヤニ・ヴァダナー・クロムルワン・ナラティワース・ラージャナカリン王女の、最近の大事な御活動に関してさらに学ぶことは決して遅くありません。





王女は5月6日にロンドンでお生まれになられ、スイスのローザンヌで幼少期を過ごされました。そして、社会科学の専攻で、化学と教育の学士号を取得されました。当時のタイの王女にとっては大変な御成功でした。ヨーロッパから学んだ若い指導者精神で、王女はタイの大学で教鞭を執られました。王女は化学ではなく、フランス語と文学の講師になられ、卓越な外国語教育学者の先駆者的な存在になられました。


王女は現在教えることこそもうされていませんが、クラシック音楽の筋金入りの賛美者として全国的に様々な大学における芸術と音楽教育の御後援を続けられています。


王室の一員として、王女はまた御両親であられるソンクラーのマヒドン王子と王女の御業績、特に国家の予防衛生においての活動を促進されています。王母の有志医師団や義足財団、タイ腎臓財団など、カラヤニ・ヴァダナー王女の多くの医療福祉プログラムは王女の御後援下の確立された財団に成長しました。


カラヤニ・ヴァダナー王女は王室の最年長の王族であられ、またタイ王室の全130系譜の女家長であられます。あまり知られていないことですが、王女の長年の御熱意による御活動のひとつとして、王女の御祖父であられるチュラロンコン大王によって設立されたワットラーチャボピット寺院内の忘れられた王室墓地と修道院の修復活動があります。





一世紀以上前に、チュラロンコン大王はヨーロッパ諸国の首都を訪問された初めてのアジアの君主としてヨーロッパにおいて広く知られていました。チュラロンコン大王のいくつかの冒険的でかつ歴史的なルート、例えば北極への旅とスリランカの仏歯寺への巡礼の旅を、王女も自ら辿られました。


しかし、王女は最近、御祖父の足跡を辿りながらも、より挑戦的な新しいルートを発見されました。それは、シャム国王の三蔵経の世界の30ヶ国との歴史的ネットワークです。


古いインドの言語である神聖なパリー語で棕櫚(シュロ)の葉に書かれた三蔵経は、2,000年以上の仏陀の教えの従来の貯蔵庫です。


1893年に、チュラロンコン大王は仏教のこの伝統的な習慣に改革をもたらされ、書物として初めての三蔵経を出版されたのです。神聖なパリー語の文を古いクメール書体で手書きで記す代わりに、チュラロンコン大王は新版を近代シャムの書体で、合計39巻、西洋の印刷機によって印刷させました。
印刷技術と製本技術のおかげで、シャム書体版の三蔵経は王室の贈り物として5つの大陸、260の機関に送られました。


この事実はカラヤニ・ヴァダナー王女が議長を御務めになられた情報通信技術省主催の“シャム国王の三蔵経の技術”という記念公開講座によって、明らかになったのです。









今日、このシャム国王の三蔵経の完全なセットがタイで一つしか残っていません。しかし、これらの大変貴重な収蔵物の多数は、ソルボンヌのパリ大学や、スウェーデンのウプサラ大学のカロリーナ・レディヴィヴァ図書館、米国のスミソニアン博物館、サンクト・ペテルスブルクのロシアン・アカデミー、日本の国立国会図書館、オーストラリアのシドニー大学、および香港の中文大学など、世界各地の図書館と大学で現存していると信じられています。





チュラロンコン大王の先見の明によってローマ書体アルファベットとシャム書体との対照音訳図などのような革新的な音声表が印刷されたことは、100年以上前に世界中の国際的な学者がパリー語文を研究することを可能にしました。





このシャム国王の三蔵経による画期的な貢献は、仏暦25世紀を祝福するため1957年にビルマのヤンゴンで2,500人のテラワーダ仏教の僧侶が集まって開かれた史上初の仏教集会である国際仏教会議(the Great International Council)の堅実的基盤となりました。




他の国の元首と同様、タイ国王王妃両陛下は1960年にビルマの首都への公式訪問の際に国際仏教会議を訪問なさいました。


2005年にシャム国王の三蔵経がダンマ・ソサエティ財団により、初めてローマ字版で出版されました。


カラヤニ・ヴァダナー王女がこの新版のことをお知りになり、早速世界中への寄付計画に御後援をなさいました。


チュラロンコン大王の足跡を密接に辿られ、王女はシャム国王の三蔵経が保管されている国際的な機関への三蔵経贈呈企画の名誉総長の職に就かれました。


2005年3月6日に、王女はスリランカのコロンボへ歴史的な一日の巡礼の旅をなさり、当時のスリランカのチャンドリカ・バンダラナイケ・クマラトゥンガ大統領に世界版三蔵経を寄贈されました。そのことを受けて現在のスリランカのマヒンダ・ラージャパクセ大統領は3月6日を“世界三蔵経の日”にすると宣言しました。



それ以来、多くの国際的な機関より王女に対して世界版三蔵経を受け取りたいという要求が寄せられています。


今年の要求はインドのマハーボーディ・ソサエティ、日本テーラワーダ仏教協会、そしてスウェーデンのルンド大学から来ました。


世界版三蔵経の寄贈式は、王女が世界へ寄贈し始めた記念日の3月6日にタイ外務省で執り行われました。






王女による三蔵経の後援のおかげで、チュラロンコン大王の文化遺産であるシャム国王の三蔵経が再発見されました。そして最も重要な事は、古代の経典における人間の英知は現在もしっかりと保護されて、繁栄のために保存されています。


現在タイで王女が監督されている三蔵経計画は二つあります。一つはナコンサワンの田舎の寺院でのパリー語の読経、そしてもう一つはバンコクのアプソーンスワン修道院でのアユタヤ期の三蔵経堂の修復です。


写真解説

左上 1960年の公式訪問の際にヤンゴンにある国際仏教会議の会場を訪れられたタイ
のプミポン・アドゥンヤデート国王陛下とビルマの大統領

中央上 40巻の「世界版三蔵経」を囲まれるカラヤニ・ヴァダナー王女と、一世紀以上前に王女の御祖父であられるシャムのチュラロンコン大王よりシャム書体版の「シャム国王の三蔵経」を授かった25カ国の大使および代表

中央下 2005年3月6日に、コロンボのバンダラナイケ記念国際会議場にてスリランカのチャンドリカ・バンダラナイケ・クマラトゥンガ大統領にローマ書体版の「世界版三蔵経」を寄贈されたカラヤニ・ヴァダナー王女

右下 日本の唯一の国会図書館である国立国会図書館の希少書物コレクションで発見された「シャム国王の三蔵経」

左下 二巻の三蔵経の表紙。下は1893年版のパリー語文で世界で初めて印刷された歴史的な39巻セットの「シャム国王の三蔵経」版の表紙。上は2005年にダンマ・ソサエティ財団が出版した40巻セットのロマン書体の「世界版三蔵経」の表紙。




バンコクポスト紙
2007年6月23日(土)